喫煙者の肩身が狭くなっている昨今、周りを見ても禁煙者がどんどん増えているように感じます。
嫌煙ブームの昨今、フィリップモリスは紙巻きたばこからの撤退を早々に打ち出し、将来的に紙巻きたばこは淘汰される運命です。
では、今後電子タバコや加熱式たばこはどうなっていくのでしょうか。
アメリカの動向を確認しながら、今後の行く末を考察していきます。
米国では販売されていないアイコス
日本で爆発的人気を誇ったフィリップモリスインターナショナル(PMI)の加熱式たばここと、iQOS(アイコス)ですが、実はアメリカでの販売許可は長いこと降りていませんでした。
日本のように税収がどうたらとか、そんな面倒なことは言わず、「健康に悪い(かもしれない)からダメ!」という米食品医薬品局(FDA)の判断です。※WHOも同じ姿勢
前FDA長官のスコット・ゴットリーブ氏は、若者に蔓延する電子タバコへの懸念を始め、タバコ規制に積極的だったという背景もありますが、アメリカの製品にも関わらず、です。
おかしな話ですよね。
からくも実験台となった日本
photo by PMI - Philip Morris International
そして2019年4月、長官辞任のタイミング(こちらは3月に発表)を見計らったかのように、販売許可が降りました。
これが何を示唆するのかと言えば、日本を含め、アイコスが販売されているアメリカ以外の国は、見事に実験台にさせられてきた(かもしれない)ということです。
特に、禁煙後進国の日本は全てが後手。ほんの数10年前ですら、諸外国に比べて喫煙率が異常だったため、嫌煙ブームに乗じて、先行的に電子タバコ市場のシェアを独占することができました。
テストマーケティングって言えば聞こえはいいけど、日本は喫煙ガラパゴス大国にゃ〜
現時点では、JTのプルーム製品(プルーム・テック、プルーム・テック・プラス、プルーム・エス)、glo(グロー)と、競合製品が力を入れてきたことにより伸び悩んでいるようですが、それでもなお、現在も圧倒的なシェアを誇っています。
電子タバコも今後は規制対象?
もちろん日本の場合は、ニコチンを含むリキッドの製造・販売・譲渡は、薬機法(薬事法)により禁止されています。リキッドはあくまでも薬扱いです。
もし日本でニコチン入りリキッドが欲しくても、正規販売ルートは存在せず、原則「個人輸入」でしか入手することはできません。
そんな少し特殊な背景もあり、紙巻きたばこ代わりになる、いわゆる加熱式たばこが売れまくった(加熱式たばこ市場として最適)という事実もあります。
ですがアメリカでは、電子タバコの方も問題となっていて、サンフランシスコ市では、米国初の電子タバコ販売禁止条例を承認し、大きな波紋を呼んでいます。
違反者には罰金も科せられるとのことですが、本条例はあくまでも20歳以下が対象。
ベイプは中高生などの若年層にとって、ファッション的にも人気があり、その気軽さから、ニコチン中毒を引き起こす可能性が懸念されています。
Tips:10代に特に人気の「POD」
- 「POD」は、電子タバコシェアの2/3を占めるジュール・ラブズ(JUUL Labs)の「JUUL」や、JT傘下の「ロジック」などのこと
マリファナ合法のカリフォルニアだけど、10代にマリファナリキッドを使わせない狙いもあるかもしれないぴょん
加熱式たばこや電子タバコはますます拡大していく
ご存知日本たばこ産業ことJTは、たばこ事業縮小傾向かと思いきや、紙巻きたばこの売り上げは減少傾向にあるものの、全体では好調なのをご存知でしょうか。
今やJTは、世界で業界第3位となっています。※2018年2月時点-JT調べ。一説には4位とも。
理由は色々ありますが、海外たばこメーカーの積極的な買収(M&A)や、販売数量減を補填するための増税便乗値上、国内工場の閉鎖といった構造改革の実施などが挙げられます。
これはさておき、紙巻きたばこ国内シェア6割を占めるJT。紙巻きたばこの売り上げが減少する中、今後たばこ事業はどうなっていくのでしょうか。
少なくとも先進国では縮小傾向にあるものの、新興国ではまだまだ伸び代があるのも事実。
また国内においては、比較的煙の少ない加熱式たばこが主流となっていくのも容易に想像できます。
その国内シェアの半数以上を占めるJTが、新たなプロジェクトに踏み込んでいます。
JT Rethink PROJECT
“視点を変えれば、世の中は変わる。”というキャッチコピーを元に、「JT Rethink PROJECT」という活動をしています。
活動自体は「Rethink Creative Contest」といったコンテストを開催したり、人材育成の要素も兼ねた、非常に素晴らしいものです。
ざっくりまとめると、下記のような活動を目指しています。
- 吸わない人のために何ができるか 視点を変えて喫煙者も非喫煙者も快適に過ごせる限りなくクリーンな社会へ
一見すると、非常にポジティブなキャンペーンです。
ですが、こうも言っています。
「たばこは火を使うもの」という常識にとらわれず、 蒸気を使うたばこの開発を追求する。
たばこの嫌なにおいはもちろん、 有害とされる成分だって、限りなくゼロにできる。
吸わない人の気持ちを考えた、究極にクリーンなたばこを目指して。
JTは挑戦を続けていきます。
つまりこれは、「たばこ製品まだまだガンガン作ってくよ」ということを示唆しています。
当たり前だけど需要があるうちは金になるし絶対なくならないにゃん
アプローチを変えて変化に対応しているとも言えますが、まだまだ国をあげてニコ厨を広げていく気満々です。
嫌煙家が嫌うのは何か
受動喫煙防止対策こと、健康増進法もいよいよ本格化してきました。
喫煙者であった私ですら副流煙は嫌いだったので、過激派はともかく、嫌煙家が一番嫌がるのは、たばこのにおい(に付随する有害物質含む)ではないかと思います。
ですが過激な嫌煙家のみならず、本音を言えば、「煙があろうがなかろうが、近くで吸うな」、極端なことを言えば「たばこ消えろ」ではないでしょうか。
また、配偶者や家族であれば「できれば健康のためにやめてほしい」というのが本音だと思います。
たばこを吸わない人は、マナーさえ守ってくれればいいという人が大半。ですが一部マナーの悪い人たちのせいで、そのイメージは相変わらず悪いです。
嫌煙家は、においだけでなく、たばこそのものが嫌いです。
このJTのクリーン戦略、都合よく言っているだけで、たばこを吸う人・吸わない人の議論は平行線。どれだけ取り繕っても一方が“我慢”する以外、共存などありえないと個人的に思います。
まとめ
日本のたばこ市場は、これだけ嫌煙ブームが騒がれてもなお、紙巻きたばこのシェア率は依然高く、未だ50代以上の喫煙者を加熱式たばこへと取り込みきれてはいません。
加えて、健康懸念や周囲への配慮を理由に、紙巻きたばこから徐々に移行する人が増えてきたとはいえ、現状はアイコスをはじめとした(独特の穀物臭がする)高温加熱型の加熱式たばこが主流。
そして、その牙城を崩すべく、同じく高温加熱型の加熱式たばこの「glo(グロー)」、「Ploom S(プルーム・エス)」が追随をかけている状況です。
高温加熱型のデバイスは、スティック状のたばこを加熱して吸引します。
そのため、特有の穀物臭は必ず出ますし、吸わない人からしたら嫌なものや嫌なはずです。
20年、30年後の将来は、ベイプのようなノンニコチンタイプか、ニコチン入りでは、JTの「プルーム・テック」、「プルーム・テック・プラス」といった、低温加熱型デバイスが主流となっていくのではないかと勝手に思っています。
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